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相場 英雄『ガラパゴス・下』なぜ彼は殺された?派遣労働者の闇をえぐる社会派ミステリー

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相場英雄さんの『ガラパゴス下巻』は、非正規雇用者や派遣労働者の不安定な立場をテーマにした社会派ミステリー小説です。上巻で捜査対象となった身元不明の遺体は、沖縄県出身の派遣労働者の男性と判明しました。下巻では、彼が事件に巻き込まれた真相が解明されていきます。田川刑事が、日本全国を飛び回りながら犯人に迫っていきます。現代日本の暗部を炙り出す社会派ミステリー小説です。

この記事は、相場英雄さんの著作『ガラパゴス』下巻のレビューです!
上巻を読んでいない場合は、ネタバレになってしまいます。ご注意ください!

上巻のレビューはこちらから。

本好き女子

この前、相場英雄さんの『ガラパゴス』上巻を読み終わったよ。

いよいよ、下巻を読み始めるのだけどストーリー展開が気になる……

文香

上巻では、空きアパートの一室で不審死を遂げていた人物の身元がわかったよね。

事件に巻き込まれて殺害されたというところまではわかったけれど、理由と犯人は結局わからなかった……。

本好き女子

下巻では、いよいよ捜査一課の刑事・田川が犯人を追い詰めるのかな?

ちゃんと犯人が逮捕されて、謎がすべて解けるといいけれど、いったいどうなるんだろう?

【ガラパゴス下】はこんな人におすすめ

・ガラパゴスの上巻を読み終わった人

・非正規雇用の問題について知りたい人、今の働き方に悩んでいる人

・相場英雄さんの小説や、警察小説が好きな人

この記事を書いた人


読書ブロガー
Webライタ
文香
小説・ビジネス書・実用書、などのジャンルが好きな読書愛好家。

本の魅力を伝えたくて書籍情報ブログを運営しています。本好きが高じて、図書館にも長年勤務していました。

現在は、Web3分野・NFT・金融ジャンルの記事を執筆するWebライターです。

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目次

『ガラパゴス・下』のデータ・概要

文香

ガラパゴス・下』のデータを紹介するよ。

タイトルガラパゴス・下
著者相場 英雄(あいば ひでお)
出版社 小学館
初版発行2016年1月31日
ページ数334ページ(単行本)
432ページ(文庫本)
価格・単行本  1,500円+税
・文庫本  913円(税込み)
・電子書籍 913円(税込み)
受賞歴・2016年 第29回山本周五郎賞 候補作
・2016年版「週刊文春ミステリーベスト10」にて17位

『ガラパゴス・下』5つの特徴

文香

『ガラパゴス・下』の特徴をわかりやすく表してみたよ。

『ガラパゴス・下』は、こんな特徴がある本です。

(※注意 下記の評価は、私個人の感想に基づいたものです)

真相が気になる

複雑に入り組んだ人間関係と、時間の流れ、社会背景が絡み合って、ストーリーが展開していく。なぜ事件が起きたのか?誰が真犯人なのか?すべての真相が気になる。

ハラハラする展開

刑事の田川と木幡の捜査を妨害しようとする、刑事の鳥居など不審な人物が多くて、捜査が思うように進まないシーンもある。展開が読めないため、ハラハラさせられる。

物語にのめり込んでしまう

捜査が終盤になるにつれて物語の展開が一気にスピードアップしていくため、思わずのめり込んでしまう。下巻の中盤以降は一気読み必至。

心が痛くなる

「なぜ被害者の仲野が、このような目にあってしまったのか?」「この小説のように、きつい思いをしている人が現実にも大勢いるのでは?」と考えて、心が痛くなる。

考えさせられる

「人は、どう生きたらいいのか?」「社会は変わらないのか?」など根本的なところから考えさせられる。

『ガラパゴス・下』の著者情報 相場英雄さんの経歴データ

文香

「ガラパゴス・下」の作者、
相場英雄さんの経歴やデータをご紹介します。

相場英雄さんの経歴
1967年9月18日新潟県三条市で生まれる
新潟県三条高等学校を卒業
外国語専門学校を卒業
1989年時事通信社に入社 
キーパンチャーを務めたのち、経済部記者に転身
日本銀行や、東京証券取引所などを担当
2005年『デフォルト 債務不履行』で
第2回ダイヤモンド賞(現・城山三郎経済小説大賞)を受賞
2006年時事通信社を退職して専業作家になる
2012年『震える牛』が累計28万部のベストセラーになる
2013年『血の轍』が第26回山本周五郎賞 候補作になる
同じく『血の轍』が第16回大藪春彦賞候補作にもなる

相場英雄さんの作品では、今回ご紹介するガラパゴスも含まれる
「警視庁捜査一課継続捜査班・田川信一シリーズ」のほか
「みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎シリーズ」「ナンバー シリーズ」が人気です。

相場英雄さんは、ご自分でTwitterとInstagramを運用していらっしゃいます。

どちらも情報が満載なので、お見逃しなく!

Instagramでは、グルメ情報をたくさんご紹介されています!

『ガラパゴス・下』の主要な登場人物

田川 信一
(たがわ しんいち)
警視庁 捜査一課継続捜査班 警部補
肝臓を患い、捜査一課第三強行犯係から異動して6年

事件のたびに、聞き込みで集めた情報を書き込んだ手帳を愛用している
木幡 祐治
(こわた ゆうじ)
3か月前に捜査一課から鑑識課に異動してきた警部補
鑑識課では身元不明相談室の担当である

田川とは警察学校の同期 
仲野 定文
(なかの さだふみ)
沖縄の宮古島出身の青年。2年前に団地の空室で謎の不審死をとげる
田川と木幡の操作により、自死ではなく殺害されたことが判明

両親がおらず祖父に育てられ、三線が得意だった
宮古島の中学校から北九州の高専に進学
卒業後にパーソネル関連の派遣社員として働いていた
鳥居 勝
(とりい まさる)
捜査一課の刑事

名古屋出身で、迫力のある名古屋弁で話す
常に悪いたくらみをしているのか、裏で付き合う人物や人脈が怪しい
森 喜一
(もり きいち)
人材派遣業界一の大企業「パーソナル・ホールディングス」のトップ

刑事の鳥居と同じ名古屋の出身で、高校の先輩でもある
鳥居と結託しており、何か重大な秘密を隠し持っているらしい

『ガラパゴス・下』の要約・あらすじ(ネタバレなし)

2年前に古い団地の空室で自死に偽装して殺害された若い男性。市の正体は、沖縄出身の派遣労働者、仲野定文だと判明した。

中野定文は沖縄の中学を出たあと、北九州の高専に進学。優秀な成績だったため、大企業に就職すると思われたが、友人に進路を譲ってしまう。

結局、高専を卒業後は派遣社員として各地の工場に配属され、製造業に従事していた。しかし仲野はあるとき、何者かに殺害されてしまう。

「仲野は何かを知ってしまったために消された?」そう推理した田川と木幡は捜査を続ける。全国各地にいる、仲野とゆかりのある人物を訪ねて回るうちに、事件の輪郭が少しずつあきらかになっていく……。

そんな中、田川と木幡の捜査を妨害してくる悪徳刑事の鳥居にも魔の手が忍び寄っていた。

はたして、事件の真犯人は誰?その動機と事件の真実は明かされるのか……。

巨大な産業の悪と対峙することになった田川と木幡は、果たして事件を解決できるのか?

徐々にスピードアップしていき、真実に迫るストーリー展開は圧巻です。

『ガラパゴス・下』読後の感想

ガラパゴス下巻を読み、被害者となった宮古島出身の青年、仲野が最後まで救われなかったことに哀しみを感じました。

宮古島の中学を卒業して北九州の高専に進学するとき、先生とオジイに送り出され、明るい未来に向けて旅立ったはずだった仲野ですが……。

たった一歩間違えただけで、仲野の人生は辛く厳しいものになってしまいました。派遣社員として、自動車関連の工場で働いていた仲野は、ある重大な欠陥に気づいたのです。

正義感が強い仲野は、そのことを世の中に告発したかったのでしょう。しかしある勢力に気づかれ、仲野は消されてしまったのです。

実行犯と共犯者の正体……そして動機は、あまりにも哀しくて暗いものでした。

「小説だから作り話、これは実話ではない」そう思っても、このような事件が実際に起こりうる可能性があるのではないかと不安になりました。

これから先、日本の経済状態が悪くなっていくようであれば、さらに非正規雇用者が増えるでしょう。そのときには、立場の弱い人たちが苦しい思いをするはずです。

これは誰にでも起こりうる物語であり、私も明日は我が身かもしれないと感じます。そうならないためには、生きる力をつけて、自分を守っていかなくてはならないのでしょう。

しかしそれでは「誰もが生きやすい社会」とは言えないと感じます。『ガラパゴス・下』は日本の将来、そして自分の今後に対して漠然とした不安を与えられ、考えさせられる小説でした。

『ガラパゴス・下』で印象に残ったセリフ。

「怖くなりました。とっさにその場を離れようとしたとき、仲野さんに足をつかまれ、こう言われました。〈貧乏の鎖は、俺で最後にしろ〉……」

ガラパゴス・下 283ページ

これは、仲野が実行犯に襲われて、命を落とす直前に言ったセリフです。自分の命を奪われると気付いた仲野は、犯人に対して、どのような思いでこう言ったのでしょうか……。

貧困の連鎖は、いまも日本中で問題となっています。

小説のなかで、実行犯と共犯者は仲野に手をかけて、貧困の連鎖から抜け出しました。

そんな手を使い安定した生活を得て、彼らは幸せだったのでしょうか?それは虚構であり、きっと彼らも幸せだとは感じてはいなかったはずです。

『ガラパゴス・下』のまとめ

今回は、相場英雄さんの『ガラパゴス』下巻をご紹介しました。

この小説で被害者として発見された仲野は、宮古島の中学校の模合(もあい)のおかげで、高専に進学できました。「模合」とは共同で資金を出しあう、沖縄独特の金融風習のことです。

しかし不幸なことに、仲野は模合を返し終わることなく殺害されてしまいました。それでも中野は被害にあう直前まで、模合のこと、そして宮古島のことを気にかけていました。

仲野は、どうしてこのような目に合わなければならなかったのか……。

この小説は、いまの日本社会と労働環境に警鐘を鳴らしているように感じます。

上巻をまだ読んでいない方は、↓からどうぞ!

『ガラパゴス・下』の次に読んで欲しいおすすめ本

本好き女子

ガラパゴスの下巻を読み終わったよ。
悲しい結末だったけれど、いろいろ考えさせられたね。

ほかにも、相場 英雄さんの小説を読んでみたいなぁ。
同じような社会派ミステリーで、おすすめの本はある?

文香

それなら『マンモスの抜け殻』がおすすめ。
こちらも相場 英雄さんの著書です。

社会派ミステリー系の小説で、介護施設の現状がテーマになっています。

日本の高齢化社会を考えるうえで避けて通れないテーマなので、興味があったら読んでみてね。

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この記事を書いた人

当ブログ『本のことなど。』の管理人です。
おもしろかった本や役に立つ本を紹介したくて、このブログをはじめました。

年間300冊近くの本を読んでいる読書愛好家です。
本を読まない人生はまったく想像できません。
読書は私にとってのライフワークであり、生きがいです。

書店と図書館は、心癒される大切な場所です。
本好きが高じて、図書館に長年勤務していました。
現在はWebライターをしています。

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