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忌名の如き贄るもの 三津田信三 忌名が果たす恐怖の役割とは?

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忌名の如き贄るもの

あなたは、自分を守ってくれるもうひとつの名前「忌名」を知っていますか?今回ご紹介するのは、三津田信三さんの『忌名の如き贄るもの』。自分を守ってくれるはずの忌名が引き起こす恐怖のできごとが描かれるホラーミステリー。不気味さと不思議さがせめぎあう、新感覚な怖さを味わえる小説です。最後にあなたを恐怖が襲うかもしれません。

こんな人におすすめ

・ホラーミステリーが好きな人

・日本に古くから伝わる民俗的な事象に関心がある人

・刀城言耶シリーズのファン

文香

今回ご紹介するのは、三津田信三さんの『忌名の如き贄るもの』。

三津田信三さんの人気作品、『刀城言耶シリーズ』の新作です。

刀城言耶が生名鳴地方(いななぎちほう)の虫絰(むしくびり)村で、名前にまつわる怪異と向き合うストーリー。

自分につけられたもうひとつの名前、忌名に秘められた謎を解き明かしていくホラーミステリーはゾクゾクする恐怖が味わえます。




文香 読書ブロガー/Webライター

小説・ビジネス書・実用書などのジャンルが好きな読書愛好家です。
以前は図書館で働いていました。

本の魅力を伝えたくて書籍情報ブログを始めました。

現在はWebライターとして、Web3・金融・ビジネス・BtoBジャンルの記事を執筆しています。

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目次

『忌名の如き贄るもの(いなのごときにえるもの)』の概要

『忌名の如き贄るもの(いなのごときにえるもの)』はこんな本です

タイトル忌名の如き贄るもの(いなのごときにえるもの)
著者三津田 信三(みつだ しんぞう)
出版社 講談社
初版発行2021年7月27日
価格・単行本 2,035円(税込み)
・文庫本 1,111円(税込み)
・Kindle 1,925円(税込み)

『忌名の如き贄るもの』の著者 三津田信三さんについて

『忌名の如き贄るもの』の著者 三津田信三さん はこんな人です。

三津田信三(みつだしんぞう)さんは、奈良県出身です。

小説家になる前は、編集者をされていました。

2001年に、『ホラー作家の棲む家』(文庫では『忌館(いかん)』に改題)で作家デビューしています。

ホラーとミステリーが融合した作品で、独自の世界観を確立しました。

今回紹介する作品と同じ、刀城言耶シリーズの『水魑の如き沈むもの』で2010年に第10回本格ミステリ大賞を受賞しています。

他に『家シリーズ』や『物理波矢多(もとろいはたや)シリーズ』なども、人気です。

『忌名の如き贄るもの』の要約・あらすじ(ネタバレなし)

不気味な山と川の風景画像

この物語の舞台になるのは架空の土地である、生名鳴(いななぎ)地方の虫絰(むしくびり)村です。

虫絰村では昔から、子どもが7歳になると『忌名の儀式(いなのぎしき)』を行います。

昔は子どもの死亡率が高かったために、「六つまでは神のうち」と言われていました。

7歳まで生きて成長する子どもの数が、とても少なかった時代があったためです。

そのため虫絰村では、無事に7歳になった子どもには「神から人になった証として」忌名の儀式を行います。

忌名の儀式には『人生の災厄を払う』という目的があるのです。

    

虫絰村の旧家である尼耳家(あまがみ)の李千子(いちこ)も7歳になり、忌名がつけられました。

祖父が見せてくれた紙には、李千子の忌名が「生名子(いなこ)」と書いてありました。

祖父は、李千子にこう言います。

「この忌名で呼ばれても、けっして振り返ってはいけない。まして返事などしては絶対にいけない。
言いつけをやぶったら、目がつぶれてしまうぞ」と。

   

そして7歳の李千子は、たった1人で恐怖の儀式へ出発しました。

李千子は祖父の言いつけを守り、怖い思いをしながらも危険な道を歩き、滝に着きます。

そしてなんとか無事にお札を流す儀式を行い、帰宅しました。

   

ところで、この『忌名の儀式』は7歳、14歳、21歳のときに3回行われます。

7年後、14歳になった李千子は再び『忌名の儀式』を行うのですが……。

  

なんと李千子は、儀式の途中で亡くなってしまうのです。

しかし李千子は、あろうことか自分の葬式中に生き返ってしまいます。

恐ろしいことに、李千子が仮死の状態なのに葬式が行われていたのです。

    

蘇生した李千子は無事に成長し、中学と高校を卒業して村を出ます。

そして李千子は、東京で会社の御曹司と婚約することになるのですが……。

そして結婚の挨拶をするために虫絰村に行くことになったのですが、その前日、村で恐ろしい事件が起きてしまうのですー。

『忌名の如き贄るもの』の主要な登場人物

尼耳李千子
(あまがみいちこ)
尼耳家の長女。
7歳時の『忌名の儀式』で「生名子(いなこ)」という忌名をつけられる。

14歳の忌名の儀式中に亡くなってしまうが、火葬場に運ばれる最中に生き返る。

その後高校を卒業し、東京に行き就職する。
その後勤め先の御曹司と婚約することになる。
  
尼耳件淙
(あまがみけんぞう)
李千子の祖父。

尼耳家の家長で、長男の太一や孫の三市郎のふがいなさにやきもきしている。

孫たちの『忌名の儀式』を毎回執り行う役割を持つ。
忌名の命名方法を受け継いでいる、数少ない村人の1人でもある。
  
刀城言耶
(とうじょうげんや)
怪奇幻想作家。
各地で起こる怪異事件を解決することが多いため、毎回探偵の役割を果たす。

民俗学研究や各地の伝説などに造詣が深い。
李千子の婚約者である、発条福太の大学時代の後輩でもある。
   
発条福太
(はつじょうふくた)
李千子の婚約者。
李千子が東京で勤めている、玩具メーカーの御曹司。

刀城言耶の大学時代の先輩にあたる。
  

『忌名の如き贄るもの』読後の感想

現像的で不思議な山の中の風景

刀城言耶シリーズは日本に古来から伝わる民間信仰や、各地の伝説などをモチーフにした内容が特徴の小説です。

   

今回の題材になっているのは「忌名」。

これは、いわゆる「忌み名」とは違うものです。

「忌み名」とは、故人の業績をたたえるためにつけられる名前のことですよね。

   

それとは違い、「忌名」は、人生の災厄を忌避するためにつけられます。

この小説では李千子につけられた忌名が大きな意味を持ち、ある恐ろしい役割を果たすのです。

物語の最後にこの名前の意味に気付いたとき、あまりの恐ろしさに私は思わず震えました。

また、李千子の苗字や、他の村人たちの氏名などもこの物語のキーワードの一部として重要になってきます。

   

また、この小説でポイントになるのが「村八分」と「差別」です。

どちらも古い時代の日本の因習なのですが、作中で起きる数々の事件や謎を解き明かすカギになります。

この小説で描かれている時代は戦後以降ですが、今もこのような古い因習が残る地域はあるのでしょうか。

あるとしたら、とても悲しいことだと思います。

そして犯人が事件を起こした動機がわかったとき、こうするしかなかった理由に切なさを感じます

    

犯人の本当の正体に気付いたとき、驚愕と恐怖があなたを襲うでしょう。

最後まで気が抜けない、静かな怖さを感じるミステリーホラー小説です。

『忌名』がキーワードとなる、怖すぎる結末……。

どうかあなたも、味わってみてください。

『忌名の如き贄るもの』に出てくる印象的なセリフ

“しかしながら本当の真犯人が持っていた動機の異常性は、そんなものではありませんでした。正に犯罪史上に残る前代未聞の、真(まこと)に頭の可怪しな動機だったのです。これほどまでに悍(おぞ)ましい動機は、僕もはじめてです。

忌名の如き贄るもの 408ページ

最後に犯人を突き止めた刀城言耶が言ったセリフです。

犯人がなぜ事件を起こしたかを、刀城言耶が推理しながら解説しています。

実際に、犯人がこの事件を起こした動機はあまりにも身勝手かつ、理不尽な理由からでした。

さらに、犯人の正体もあまりにも悍ましく恐ろしかったのです。

刀城言耶のセリフが、この小説のすべてを物語っています。

『忌名の如き贄るもの』のまとめ

この小説はホラーミステリーであるため、謎解きとゾクゾクするような恐怖感を同時に味わえます

また地域民俗学的な要素も多く含まれており、古くからの言い伝えや伝説、行事に関する知識も知ることができて興味深かったです。

   

戦後少し経った頃という時代背景のため、現代とは多少違う部分もあるでしょう。

そのため、今より少し昔に行われていたであろう地域独特の葬儀の方法など、興味深い風習も多く出てきます。

霊柩車や火葬場が一般化する前の葬儀様式などもわかり、興味深いです。

こういった民俗学的な知識に触れられるのも、『刀城言耶シリーズ』の人気の理由だと感じます。

気になる方は、ぜひ読んでみてください!

忌名の如き贄るもの

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この記事を書いた人

当ブログ『本のことなど。』の管理人です。
おもしろかった本や役に立つ本を紹介したくて、このブログをはじめました。

年間300冊近くの本を読んでいる読書愛好家です。
本を読まない人生はまったく想像できません。
読書は私にとってのライフワークであり、生きがいです。

書店と図書館は、心癒される大切な場所です。
本好きが高じて、図書館に長年勤務していました。
現在はWebライターをしています。

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