書評といえば新聞や雑誌によく掲載される印象ですが、昨今はネット上でも多く見かけるようになりました。
本が好きな人なら一度は、書評のお世話になったことがあるでしょう。
本を選ぶときの参考となる書評ですが「いったいどんな人が書いているのだろう?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
今回は、紹介する本がAmazonランキングで急上昇することで有名な書評家、印南敦史さんの『書評の仕事』を紹介します。
この本を読むと、書評が読みたくなるうえに文章術も学べます。
自分で書評を書いてみたい方や、読書記録を残したい方におすすめの1冊です。
・書評家という職業や仕事の内容に関心がある方
・書評はどのような工程で書かれるのかを知りたい方
・効率的な読書法や、わかりやすい文章の書き方が知りたい方
読書好きの方なら1度は、書評を参考にして本を選んだことがあるのではないでしょうか?
また書評がきっかけで読んだ本に、ハマったという方もいらっしゃるでしょう。
書評は、どんな人によって書かれているのか気になりますよね。
そこで今回は、書評のプロ印南敦史さんの『書評の仕事』をご紹介します。
効率的な読書術や、わかりやすい文章の書き方も解説されているため勉強になりますよ。
1.自分でも書評を書いてみたくなる
2.要約の方法や取捨選択の技術が身につく
3.人の心をつかむ文章が書けるようになる
年間300冊以上の本を読む読書愛好家です。小説、サブカル、ビジネス書、実用書、マンガ、雑誌などあらゆる本を読みます。本の魅力を伝えたくて、書籍ブログをはじめました。本好きが高じて、以前は図書館に勤務していました。現在の職業は、複数ジャンルで活動するWebライターです。
『書評の仕事』のデータ
著者 | 印南 敦史(いんなみ あつし) |
出版社 | 株式会社ワニブックス |
初版 | 2020年4月25日 |
価格 | 830円+税 |
『書評の仕事』著者プロフィール
『書評の仕事』の著者、印南 敦史さんは1962年生まれで東京都出身です。
広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、その後音楽雑誌の編集長に就任しました。
2012年にライフハッカーで書いた書評がきっかけとなり、書評家に転身。
現在も多くの媒体で連載を持つ書評家兼、作家です。
印南さんが書評を書いた本は、Amazon売上ランキングで順位が上がるケースが多いそうです。
印南さんの書評がきっかけで、ランキングの総合1位になる本も少なくありません。
『書評の仕事』 の構成
第1章 | 書評家の仕事とは 書評の歴史 書評家の仕事を詳しく紹介 |
第2章 | 書評家の「裏」話 書評家が語る業界と書評のウラ話 |
第3章 | 年500冊の書評から得た技術 人の心をつかむ文章を書く方法 要約の技術 |
第4章 | 書評の技術・書評の教養 文章に大切なリズム感とセンス |
『書評の仕事』 の要約
代表的な書評といえば、昔から存在している新聞の書評欄です。
印南さんは、新聞や雑誌に掲載されている昔ながらの書評を『トラッド書評』と呼びます。
「トラディショナル=伝統的」という意味を込め、そう呼ぶのです。
それに対し、近年ウェブ上で公開されている書評は『ネオ書評』と呼びます。
トラッド書評とネオ書評、両者の決定的な違いは「書き手の主観」が反映されているか否かです。
昔ながらの書評である『トラッド書評』には、書き手の主観が反映されすぎている、と印南さんは指摘します。
それに対して、インターネット上で公開される『ネオ書評』は情報収集もできるガイドラインとしての機能を果たしており、気軽に読めるのが持ち味なのだそうです。
なんとなく消費できるのがネオ書評の最大のメリットであり、今後の書評のあり方として大きな可能性が感じられます。
『書評の仕事』 を読んだ感想
この本では書評にまつわる内容のほかに、印南さん流の仕事術が紹介されています。
仕事論や仕事に向き合うスタンスが解説されており、ビジネス書としての側面もあるのです。
仕事論のページで、私が興味深く感じた箇所を紹介します。
印南さんが原稿料の額よりも大切にしていることについて語った部分です。
「収入が少なく追い詰められれば精神的に余裕が持てなくなるため、人の心に訴えかける文章は書けない」と印南さんは、言います。
実際に、書評だけで食べていくのは難しいのだそうです。
それを大前提としたうえで、印南さんは忠告しています。
「余裕がないオーラ」を発しているとき、それをかぎつけて“うまい話”や“都合のいい胡散くさい話”を持ちかけてくる人は多い。
そういった誘いにのって後悔しないためには「自分の心のモヤモヤ」を基準にして仕事を選ぶべきだということです。
どれだけいい条件を提示されても、心のなかに1%でもモヤモヤを感じた場合、その仕事は高確率で失敗するかもしれない。
この印南さんの持論は、真理であると感じます。
フリーランスや文筆業以外の職業であっても、この点は仕事選びの指標になるのではないでしょうか。
フリーのWebライターである私自身も、さまざまな仕事に接します。
フリーランスですから、継続案件が一時的に途切れることもありました。
そういったときは焦ってしまい、冷静な判断ができなくなってしまいます。
心がモヤモヤしながら、その場しのぎで仕事を引き受けるのもよくある話です。
そういった場合、違和感は途中で高い確信に変わります。
ですから印南さんが言うように「仕事を選ぶ際には心のモヤモヤを指標にする」方法は理にかなっていると感じます。
仕事選びで迷うのは誰しも、経験することです。
そんなときこそ自分の直感を信じながらも、冷静に対処していきたいと改めて感じました。
『書評の仕事』 を読んで勉強になった点
この本では「人の心をつかむ文章の書き方」も解説されています。
心に響く文章を書きたい方は、必読です!
この本の3章では『人の心をつかむ文章』を書くコツも紹介されています。
印南さんいわく「データを軸とした文章」よりも「書かずにはいられないという想いが表現された文章」のほうが人の心を動かすのだそうです。
データはネットで検索できますが「どう感じたか」は、検索ではわからないためです。
人の心に訴える文章を書きたい場合は、かっこいい文章よりも「本音」や「気持ち」を表現することが大切だと印南さんはおっしゃっています。
私はこの部分を読み、ロジカルな文章が求められる場合でも伝えたい想いを少しだけ盛り込むのが、読まれる文章になるコツなのかなと感じました。
『書評の仕事』 の中に出てくる名文
この本のなかで、名文だと感じた箇所をご紹介します。
“客観性が失われた文章は、やはり読んだ人を不快な気持ちにさせたり、悲しい気持ちにさせたりする恐れがあります。また、偏った考え方を押しつけてしまうことにもなりかねません。書評にしてもそれは同じで、編集者が介在しないのは仕方がないにしても、自分のなかに編集者的な視点を持ち続けることが大切だと考えるのです。”
( 書評の仕事 68ページより)
ネットで誰もが書評を発信できるようになった昨今の風潮について、印南さんが危惧している部分です。
以前は新聞や雑誌、出版社のサイトでプロの書評家だけが書評を書いていました。
しかし今や、ネット上で誰もが自分の書評を発信できる時代です。
そのこと自体はとても良い、と印南さんは言います。
ただし個人の発信には編集者のチェックが入らないため、編集機能・校閲機能が欠如した状態で、世の中に発信されます。
だからこそ次のような危険性がある、と印南さんは警告します。
「個人が発信する書評は、多少なりとも公平性や客観性が失われてしまう。
客観性が失われた文章は、読んだ人を不快な気持ちや悲しい気持ちにさせてしまう恐れがある。」
そのため、自分のなかに編集者的な視点を持つべきだと印南さんは警鐘を鳴らしているのです。
誰もが気軽に読んだ本の感想を発信できる時代だからこそ、気をつけなくてはならない部分でしょう。
『書評の仕事』 の感想まとめ
印南 敦史さんの『書評の仕事』をご紹介しました。
私自身、このようなブログを立ち上げるくらい本が大好きです。
毎週日曜日に掲載される新聞の書評欄を楽しみにしており、気になった本は後日手に取るようにしています。
また、以前勤務していた図書館には、直近の書評に掲載された本を集めた『書評コーナー』があり、根強い人気でした。
以前から、どんな人が書評を書いているのかが気になっていたため、この本を読みました。
その結果、身近な存在ながらも謎が多かった『書評』について深く知ることができて、大変興味深かったです。
書評に関することばかりでなく、仕事術や文章術についても学べる良書だと感じました。
読書好きにはもちろん、文章力を高めたい人にもおすすめの1冊です。
コンパクトな書籍でスキマ時間に読むのにも適していますので、ぜひ読んでみてください。